
想うことがある。
僕こと私の脳内での出来事なので、これだけが正解ではない。
その辺は理解してもらいながら聞いてほしい話なんだけど…。
今回、3月26日~3月31日まで、日本橋三越本店にて庄村健・庄村久喜作陶展を開催する。
その中で、僕こと私の白磁作品、3パターンの表現を用意している。
……
ちょうど今、宅急便が来て展覧会の作品を発送した。
……まぁ、どうでもいいのだが。
話を戻すと、その表現の一つに、定窯白磁をお手本とした作品がある。
画像の作品です。
この定窯白磁を作るにあたり、数年前から研究していた。
美術館でホンモノとにらめっこしたり、写真をたくさん撮ったり、
ホンモノの画像をPCで拡大して研究したり、文献をあさったり。
作りに関しては自信があった。なんせ、ここは有田だよ!?
「高度なろくろ技術を学びたかったら有田へGo!」の有田ですからね!
化学も少し得意なので、釉薬も問題なし。
だけど、一番の難関は粘土だった。
当時の粘土を手に入れるのはほぼ不可能。
だから、文献を頼りに、日本中で粘土を探しまくった。
もちろん、定窯白磁専用の粘土なんてないから、
AとBとCの粘土をブレンドして……なんてことも試した。
実際に焼いてテストもした。
完全再現とまではいかないが、それなりの粘土は作れそうな気がした。
……が、結局、それをやめたんだよね。
定窯白磁の特徴のひとつに、緻密で古典的な彫り模様がある。
でも、そこにもこだわらないことにした。
僕こと私が焦点を置いたのは、
やわらかなアイボリー色と薄手の作り。
話は少し変わるが、
駆け出しの頃、こんなことを言われたことがあった。
Aさん:「健さんの息子さんだね。頑張ってるねぇ。 でも、お父さんの作品と比べたらまだまだだね!がんばってね!」
私:「はい…がんばります。。」
当時の僕こと私は、白磁ではなく、青い釉薬を使った作品を作っていた。
数年かけて研究した釉薬で、九州のコンテストでも賞をもらった。
でも、その時に気づいたんだよね。
この作品…父の作品に似ている。
知らず知らずのうちに、父に似た作品を作っていた。
もちろん、似ているからといって悪いことではない。
親子で陶芸家をしている家なんてたくさんあるし、 似た作風の作家もたくさんいる。
だけど、Aさんの言葉は、僕こと私の中で大きく刺さった。
「このままがんばっても、父を超えることはできない」
師匠をリスペクトし、その作品に少しでも近づきたい。
その気持ちはよくわかる。わかるけれど……。
それじゃ、いつまでたっても超えられないし、並ぶこともできない。
そんな想いを抱えながら、 いろいろと脳内を整理する時間があって、 今に至るわけで……。
話を戻すと。
定窯白磁はお手本にしている。
だけど、100%の再現には意味を見出せない。
理由は、さっき書いた通り。
でも、定窯白磁はとても魅力的で、美しい白磁だと思う。
では、なぜ定窯白磁は魅力があるのか?
この核さえしっかりと押さえていれば、それでいいと考えた。
それが、
柔らかいアイボリー色と薄手であること。
磁器というのは、元をたどれば「石」。
その素材を使い、精密かつ薄手に作られた作品は、 磁器の硬さと白磁の品格を宿す。
さらに、色合いは温かみのあるアイボリー。
この色があるからこそ、磁器の硬さが際立つ。
そして、磁器の硬さがあるからこそ、アイボリーの柔らかさも引き立つ。
相反するものが混在し、互いに引き立て合う。
だからこそ、定窯白磁は白磁の最高峰と言われるのだろう。
評論家や定窯白磁の愛好家にはダメ出しされるかもしれない。
だけど、それが認められた時、初めて本物の定窯白磁と並ぶことができる。
そんな大それた気持ちで(笑)、 今日も僕こと私の脳内会議は続くのであった。


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