「磁器素材を用いてロクロで成形し焼く」という一連の流れには深い意味が込められています。
磁器素材は「石」であり希少性を持つ鉱物であることを常に意識しています。また、ロクロで成形した痕跡を残すことも重要な要素です。
磁器は冷たく固く、マイナスのイメージがあるかもしれませんが、私はそれが素材の持つプラスの可能性でしかないことも意識している。
磁土で形つくることが裸体に相当するのであれば、釉薬は着飾る洋服のような存在です。通常はこの組み合わせが一般的ですが、
磁器素材を使う意味や活かす意味を考えると、異なる素材を組み合わせた表現に疑問を感じていました。
その疑問から、磁土での形と釉薬をすべて同じ磁器素材で作ることに思い立ちました。
釉薬を磁土から作ることで素材の新しい可能性が見えてきました。普段は見えない優しさや温かさが磁器素材にもあったのです。
例えるのなら、シルク、真珠のように底光りするような、とても優しい光沢感。
これは、素材に真摯に向き合うことで素材が応えてくれたものです。
すべてをたった一つの素材から作ることで、本当の意味で素材を活かした表現が可能になると感じ、
その作品に独特の意味や魅力を与えると思っています。
磁器素材の可能性を探求し、新たな表現美を追求している。
それが私の美意識です。
【個展のご案内】
庄村久喜 作陶展 磁(いし)の美を求めて
会期:2023年6月7日(水)~6月13日(火)
会場:鶴屋百貨店 本館8階 美術 /熊本
有田で磁器を焼く理由は何だろう?かつて問われたその問いに私は思考を巡らせていました。
歴史を学び探求する中で、磁土で成形し、
磁土の釉薬をかけて焼くことが美しさへとつながることを悟りました。
私が有田で磁器を焼く理由はその唯一無二の美しさを生み出すためにある。
その答えを胸に刻み私は今日も美しさを追求し続ける。
庄村久喜
熊本での初個展。みなさまどうぞご高覧賜りますようお願い申し上げます。
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