一般的な白磁には、
白い素地に透明な釉薬を掛けられ光を反射する白の美しさがありますが、
私の白磁は光沢が殆ど無いのに内側から光を発する蛍のような輝きがあります。
あるいは、純白のシルクのような光沢感とでも言うべきでしょうか。
そんな白磁を特別な想いを込めて白妙磁(しろたえじ)と名付けているのですが、
一般の白磁と光沢感以外にどこが違うのかを掘り下げて話していきます。
1つは、釉薬の厚みです。
一般の釉薬の厚みと比べて私の白磁はかなり薄いです。
それには理由があり、私の白磁釉薬はもとをたどれば磁器粘土なのです。
その性質上、焼いた後に剥離しやすい。
だから厚くかけることができません。
釉薬を厚くかけるためには、釉薬の濃度が関係していますが、
一般の白磁釉薬の濃度は約50濃度です。(濃度の単位を忘れました。。)
私の白磁の濃度は・・・
企業秘密のところがありますので正確には言えませんが、
かなり低い濃度値です。
厚くかけることで観られる美しい姿もありますが。
薄くかけることで観られる美しさもあります。
また、
釉薬をかけない表現、いわゆる無釉の白磁もあります。
ダイレクトに素材の美を表現できる白磁です。
以前、私も作っていた時期がありましたが、
汚れるという欠点は「美しくない」という考えから、
今は作っていません。
もう一つは、釉薬の厚みの変化を利用した表現です。
私の白磁はもともとは磁器粘土そのもので、それのみを使っているので
美しい白のグラデーションが生まれます。
一般の白磁は、磁器粘土と全く異なる原料を数種類合わせて調合して作られていますので、
白色ではありますが、磁器粘土の白とは色、質感共に異なります。
釉薬の濃淡によるグラデーション表現は釉薬のかけ方で生み出しています。
画像の作品がそうなんですが、
工程として、彫った後の作品、素焼前に一度全体に刷毛を使って塗っています。
その後、素焼を終えてデザイン的にマスキングテープを張り、
貼ったままの状態で、もう一度全体的に釉薬をかけます。
マスキングテープを張っていた部分とそうでない部分では釉薬の厚みの差が生まれます。
これが窯で焼いた後、濃淡となります。
一般の白磁で同じことをしても、
同じようなグラデーションは生まれません。
濃度を薄くした釉薬は素地の色の影響が高くなります。
前文で話したように、磁器粘土の白色と一般の白磁釉薬の白色は異なるからです。
光を吸収するような白磁、いわゆるマットな釉薬でも同じです。
マットの白磁は厚みがあるからこそマットになるのです。(一般的なマットな釉薬)
これを薄くかけて焼いてしまうと、光を反射する一般的な白磁になります。
いろんな条件がありますが、
一般のマットな白磁は、窯の中の冷却時に化学反応が起こりマット化します。
薄くかけるということは化学反応の量が少なく
結果、マット化しない。
・・・
とは言え、
私の白磁も2パターンのグラデーションが限界です。。
もともと厚くかけることができす、薄い釉薬の範囲で色の差をつけることは
不可能だからです。。
それを補うのが、彫りによる陰影でのグラデーションです。
陰影は、彫る深さによって白黒のグラデーションが生まれます。
釉薬による白のグラデーションと彫りによる陰影。
これをうまく使うことで、新しい白磁の姿が見えました。
一般的な白磁のように釉薬をかけるだけのものを白妙磁作品、
釉薬の濃淡によって陰影とは別の美しいグラデーションを作り出したものを
白妙彩磁作品として、これからも多様な表現をしていきます。
・・・・
余談ですが・・
私の白磁を初めてみるお客様に、
「マットぽいので汚れやすいのではないのか?」という質問を頂くことがあります。
実際に使っている皆様ならおわかりですが、私の白磁は汚れません。
理由は、一般の釉薬よりも粒子がとても小さく、汚れがたまる隙間がないからです。
しかしながら、赤ワインなど、一般的な白磁でも色付きしやすいものがあります。
これに関しては、同じく色付きしやすいです。。(※すぐに洗わず放置していればです。)
ですが、磁器ものは漂白できる利点があります。
私の白磁を含め、一般的な磁器の器は漂白すれば色も簡単に落ちますよ!
次回は・・・
以前別のブログで書いたものになりますが、
それを書き直したものをいくつかに分けて掲載しようかと思います・・・多分。。
コメントをお書きください